※新刊『幽冥の岸』読了後の、十二国記全巻完全ネタバレありの感想となります。
ネタバレが苦手な方はご注意ください。
なお、基本的には自分用の読書メモのようなもので、個人的な感想や考察が中心です。かなり偏った内容も多いかと思いますので、その点はご了承ください。
十二国記新刊『幽冥の岸』、予想どおり、涙と鼻水と老眼との戦いでもありました!
0巻しかなかった当時、その0巻を手に取ってから35年。
『戦城南』も『異邦の客』も『夢の結び』も、『幽冥の岸』も、そして『解説』も、すべて堪能いたしました。
感無量。
安定して、日本版聖書のような、神話のような、経典のような、宝箱のような、そしてパンドラの箱のような……そんな一冊でした!
6月から始めたシリーズの再読も、0巻ともいえる『魔性の子』から『白銀の丘 玄の月』まで、すべて読了。
興奮が冷めやらぬまま、ドキドキワクワクしながら『幽冥の岸』の『戦城南』を読み始めました。
が……
非常に重いですw
毎回読むたびに、
「十二国記って、少女小説のはずだったんだけどな……」
と思い直すのですが……。
それでも、読まずにはいられない。
自分の想像を遥かに超えているのに、そこには絶対に揺るがない、いつもの小野主上の世界がある。
今回も、その世界にたっぷり満たされました。
読後の気分は、サウナのロウリュと戦いながら、最後に冷水でリフレッシュして「整う」という、あの感じ……。
……といっても、私はまだサウナの「整う」は経験したことがないのですが(笑)。
あるいは、バンジージャンプをして(もちろん、これもしたことはありませんが)、無事に生還したような感じ……?
そんな気分を想像しました。
とてつもなく重い『戦城南』
1話目の『戦城南』。
去思と短章の鄷都捜索に伴って、本編では描かれなかった、阿選の行いによって引き起こされた人々の悲劇と、それを乗り越えていくための道筋を描いたようなお話でした。
まさに「そこ、すごく気になっていた!」という部分だったので、一気に物語へ引き込まれました。
「知らないことは襤褸(ぼろ)を着るよりも恥ずかしいこと」と言っていた楽俊。
作品は違いますが、ナルも「無知は言い訳にはならない」というようなことを言っていたと思います。
犯したことに対しては、その責任を負わなくてはならない。
そういうことなのかな、と。
定摂と彦衛のやり取りには、その「責任を負うこと」の大切さを説いた、大人版『泣いた赤鬼』のようなものを感じました。
また、定摂が彦衛にしてあげたことは、孤児だった定摂を彦衛と分け隔てなく愛してくれた沖和への、恩返しでもあったのかな……とも思いました。
そして、短章や、ご老人たちの優しさに少しだけ希望を感じることができて、最後にはほっとした『戦城南』でした。
『異邦の客』――黄朱の世界
2話目は『異邦の客』。
琅燦にまつわる黄朱の世界の話だと、どこかで見かけていたので、こちらも楽しみにしていました。
好奇心旺盛で、つかみどころがなく、自由な琅燦の性格に和みながら、黄朱の里の内側から始まる物語。
驍宗と巌趙との出会いにつながる、序章のようなお話でしょうか。
3人の絡みが楽しくて、読後感もとても良かったです。
……が。
読み足りないです。
もっとください、主上。
驍宗が計都を捕獲する話とか、荊柏を知って鴻慈と名付けるまでの過程とか、頑丘とか……。
もっとお願いします、主上!
『異邦の客』を読んだことで、黄朱側の事情や、妖獣・妖魔の事情もかなり詳しく分かりました。
これから『図南の翼』などを読み返すと、また違った感じ方になりそうです。
もし最初にこの話を読んでから『図南の翼』を読んでいたら、どんなふうに感じただろう……と想像したりもします。
『戦城南』もそうですが、個人的には、読む順番はできるだけ小野主上の執筆順に沿って読んだほうが安心する気がしています。
小野主上の小説は、読む順番や、どの情報を先に知っているかによって、感じ方が変わる作品だと思います。
そういうところも含めて、まるで『オトギリ草』のような、昭和に流行ったゲームブック的な面白さがあるな……と思ったり。
ちょっとゲームの話
話が逸れますが、ゲームといえば、小野主上はゲームがお好きという話をよく見かけます。
以前、『白銀の丘 玄の月』で、泰麒や李斎たちが文州へ向かうくだりについて、
「ドラクエやファイナルファンタジーのようなパーティだ」
というレビューを当時見かけて、十二国記メンバーでも、そんな話で盛り上がった気がします。
パーティの詳細を勝手に当てはめてみると、
李斎=戦士
泰麒=召喚士
去思=僧侶
鄷都=商人
項梁=旅芸人+吟遊詩人
……となって、
「ホントにそんな感じがする!」
と思ってしまいました。
そして『白銀の丘 玄の月』で、驍宗の情報を探している感じは、『ポートピア連続殺人事件』とか『オホーツクに消ゆ』みたいだなと思ったり。
そもそも、妖魔を折伏して仲間にするところは『女神転生』や『ポケモン』みが強いし、
妖魔を狩るのは『モンスターハンター』。
尚隆の「誰一人として置いていかない」は『ファイアーエムブレム』がよぎります。
……すみません。
かなり個人的な妄想に話がそれました(笑)。
『夢の結び』
3話目の『夢の結び』。
こちらは、『白銀の丘 玄の月』の途中で国帑に関する情報を託され、仲間を探すために宮城を脱出した後の、項梁の足取りや、潜伏している英章たちの様子が分かるお話でした。
始まりは、今回初めて登場する白玉の視点。
最初は、いつの、どこの、誰の話なのか分からないまま物語が進んでいきます。
基本的には文章だけなので、途中で登場する人々も、雰囲気が少し書かれている程度。
「この人、誰だっけ?」
となることもあります。
これが小野マジックなのかな、と思ったり。
項梁の安定した優しさや、英章の人となりを見ることができたのも嬉しかったですし、潜伏中の彼らがどう過ごしているのかが分かるのも、とても嬉しかったです。
そして、それと並行して描かれる白玉と洽平の物語。
これがまた、あしながおじさんっぽくて癒されました。
すでにSNSでも盛り上がっているようですが、
白玉団子や南瓜スイーツ、食べたいです。
コラボカフェ希望です。
恋愛モードは必要ないと思う方もいるかもしれませんが、個人的には英章と白玉のカップリングも良きです。
ここは人によって好みが分かれそうですが、私は好きです。
『幽冥の岸』――ファンサービス満載のエピローグ
4話目の『幽冥の岸』。
こちらは再読になりますが、ファンサービスの詰まったエピローグのような感じで、最初から読み直したくなるループ感が満載でした。
とにかく、
完璧な設定と世界観。
読まずにはいられない構成。
綺麗な文章。
緻密に張り巡らされた伏線。
そして、徹底してブレない信念。
小野先生は、設定や土台の設計がお好きだと、どこかのインタビューか何かでおっしゃっていた気がします。
建築の設計みたいな感じなのかな、と。
旦那さんの綾辻先生の「館」の設計も小野先生ですよね。
この「土台」こそが、十二国記の絶対的な安定感なのだと思っています。
今回の短編集では、メインストーリーでは触れられなかった裏側の物語や、登場人物たちにスポットが当てられています。
『白銀の丘 玄の月』を読んでいて、
「鄷都はどうなったんだろう」
「癸魯は?」
「南牆のその後は?」
「項梁や英章たちはどう動いていたんだろう?」
と、いろいろ気になっていたので、その背景を知ることができたのは本当に嬉しかったです。
さらに、『白銀の丘 玄の月』以外で登場してきた人たちまで結び付けながら、名もなき人々まで救い上げていく。
そこに小野先生の優しさを感じました。
以前のインタビューか何かで、
「ストーリー上、死なせなくてはいけない人たちのほうに思いがある」
というようなお話をされていたのも、今回改めて思い出して、なんだか感慨深かったです。
なんだかんだ、『魔性の子』だけではなく、本編そのものにもグロテスクさやホラーの戦慄が混じり合っている。
それも小野先生だなあ、と思います。
ものすごく重いのに、
笑いもある。
感動もある。
癒しもある。
すべてが詰まった宝庫です。
そして広瀬
そういえば、読み終わったあと、
「あれ? 広瀬のこと、忘れてた」
と思いました。
発売直前に、また広瀬が出てくるのでは? という盛り上がりがあった気がするのですが、
「出てきてましたっけ?」
と思っていたら……。
解説で、広瀬のことを書いてくださっていました。
愛のあふれたあとがきにも癒されながら、
「もしかして、今後も短編が出るような内容なのでは……?」
と、勝手に嬉しい妄想を始めています。
小野先生の「たくらみ」とは……。
実際に本が手元に届くまでは、何も期待してはいけない。
そう思いつつも……期待してしまう(笑)。
読む前に予想していた、
阿選と驍宗と泰麒と広瀬の四角関係(?)や、頑丘のその後。
鈴の女の子。
『白銀の丘 玄の月』での琅燦の行動。
臥信や霜元側の話。
耶利の話。
頑丘のその後。
朽桟の息子たちや夕麗の静之の行方。
園糸と栗と項梁のその後。
饕餮の活躍。
瑞雲観や妖魔の使役術。
冬器の歴史。
天帝の世界。
……などなど。
いろいろ気になっていたことはありますが、これからに勝手に期待しています!
もちろん、十二国記だけに留まらず、
ジョンや真砂子やぼーさんや「あの方」の、まだ語られていない過去話もお願いします!
いつまでも、短編でも何でも、たくさん読みたいです。
本を武器として戦えるくらい分厚くしていただいても構いません!
外伝が本編より長くても問題ないです!
小野天帝の掌で転がされたいです!
ようやくXに戻れる
『幽冥の岸』を読み終わって、ようやくXを気兼ねなく見られるようになった今日この頃。
新刊をゲットしてからは、ネタバレを見ないように、Xも公式の一部だけをロムる生活をしておりました。
何でもかんでもネタバレが嫌というわけではなく、特に小野主上関係だけは、できるだけ何も知らずに読みたい派です。
仕事的にも個人的にもSNSをよくロムるので、見られない時間というのも、それはそれで良い時間でした。
……が。
浦島太郎気分というか、情報弱者になってしまったような気分にもなりました(笑)。
すでに冬コミなどに向けて、創作活動が勃発している模様。
初めてコミケで姉が小野先生の本を出したときは、晴海でのコミケだったそうですが、まだ3ブースしかなかったと言います。
その後どんどん増えて、ものすごい規模の小野主上ブースが溢れていた時代もありました。
あの頃のように、また盛り上がるといいなと思います。
短く、ざっくり書こうと思っていたのですが……
思ったより長くなってしまいましたね(笑)。
蜘蛛の糸のような、わずかな光を期待しながら、十二国記の民、そしてすっかり信者となってしまった私は、癒されるべく幸せなグッズを購入・投資し、次の新作を楽しみに、しばし潜伏いたします。
では、中日までご無事で。
※あえて最後に書きました。
別小説たちの根底につながるネタバレになってしまうので、ここから先はご注意ください。
『戦城南』の定摂や彦衛、『夢の結び』の項梁や洽平が「誰なのか」が分かるくだり。
その他にも使われている手法についてですが、
「名前を聞いた瞬間に、犯人が分かる」
という感じが、某小説を思い出させます。
文字だけだからこそ成立するトリック。
分かった瞬間の、
「えっ……!」
という驚きと、
「そういうことだったのか!」
という嬉しさ。
その瞬間、震えます。
ホントにすごすぎます。
小野不由美主上。
『十二国記』ファンアート
※白玉ちゃんがいる急いで描いたラフ以外再活過去絵です。
